メッセージ

 空がうっすらと明るくなる未明、オンドリの鳴き声で一日が始まります。
水平線に沿って空が桃色に染まり、小鳥たちの囀りがにぎやかになる頃、ニワトリたちも朝ごはんを探しに野に出かけていきます。
 ホホエミ農園は海の見える丘にあります。山口県の西の端、日本海に突き出た向津具半島に位置していて、広い空と海から大きなエネルギーを受けています。そして、照葉樹の森に囲まれ、護られています。
小規模ですが、無農薬・無化学肥料で野菜や穀物の自然栽培や放牧養鶏での自然卵の生産に取り組んでいます。

ホホエミ農園ではニワトリを鶏舎の中に閉じ込めていません。
毎朝、ニワトリたちは20アールの広い農地を自由に飛びまわります。一日中、草や草の実、昆虫や腐葉土など、季節ごとに移り変わる多様な自然の恵みを自ら探して、選んで食べています。お腹がいっぱいになると、草陰や木陰で仲間と一緒に座って休み、うたた寝をします。昼下がりには念入りに毛繕いをしたり、砂浴びをします。
夕日が山に沈む頃、ニワトリたちはぞろぞろと鶏舎に戻ってきて、身を寄せ合って眠ります。

 子供がまだ小さい頃に町から田舎へ移り住み、野菜を作ったりニワトリを飼ったり、自給的な生活を始めました。
 ニワトリは当初から数羽を庭先に放して飼っていて、かれこれ8年間の付き合いになります。この間、放し飼いならではの、さまざまなドラマが繰り広げられました。テリトリーと上下関係に厳しいオンドリが来客や手紙を届けにきた配達員さんを蹴ってしまったり、オンドリに挑戦する子供の勇姿を見守ったり。夜のイタチの襲撃に備えて、ニワトリたちが地上から3mほどの高さの小枝に止まっている様子に驚いたり。卵を食べに通ってくるヘビを捕まえてニワトリの餌にしたり。はたまた、鶏小屋ではなく薮のなかのお気に入りの場所に卵を産むようになって、卵探しの日が続いたり。枚挙にいとまがありません。
 このようなニワトリとの暮らしの中で、ニワトリたちがどんな風に暮らしたいのか、だんだんと分かるようになりました。例えば、エサとなる草や虫も、本当は何でも良いわけではなく好みが観られます。その日の体調に合わせて食べ分けることができたり、食べたことのないものを先輩ニワトリに倣って食べられることを学んだりします。
 こんな暮らしをしているニワトリたちは病気知らずで健康そのものです。卵はいきいきとしています。

 ホホエミ農園として生産者の立場になりましたが、我が家の卵には自信を持ってお届けする価値があると思いました。これまでと比べてたくさんのニワトリを飼うことになりましたが、飼い方の基本は変わりません。

 自分たちの暮らしを豊かにしていくように、ともに生きるニワトリたちの暮らしを豊かなものにする。
商品としての衛生管理を必要十分なものとして、それでいて自然界の無数の生命との密接な関わりを必要以上に隔てないように工夫する。
 ホホエミ農園はそんな風に歩んで行きたいと思っています。